投資詐欺の被害に遭った際、最も重要になるのが証拠です。 弁護士は法律のプロですが、魔法使いではありません。犯人を法的に追い詰め、銀行口座を凍結させ、決済代行会社から返金を引き出すためには、その根拠となる「事実」を積み上げる必要があります。
証拠が不十分な状態では、どんなに優秀な弁護士でも「これは詐欺である」と法的に断定することが難しくなり、結果として回収率が下がったり、依頼そのものを断られたりするリスクが生じます。
逆に言えば、整理された質の高い証拠があれば解決までのスピードは劇的に上がります。 本記事では、相談前にあなたが集めておくべき「証拠リスト」を優先順位別に徹底解説します。
【最優先】絶対に消される前に確保すべきやり取りの記録

詐欺師は、被害者が気づいたと察知した瞬間にアカウントを削除し、トーク履歴を消去して逃亡します。まず何よりも先に、以下の情報を「スクリーンショット」で保存してください。
LINEやメッセージアプリのトーク全履歴
「おはよう」といった何気ない挨拶から投資の勧誘、利益の報告、そして出金を拒否された際の言い訳まで、すべてが重要です。
- ポイント: 相手の「名前(表示名)」だけでなく、設定画面などから確認できる「ID」や「プロフィール画像」も保存してください。
- 注意点: 相手が「送信取消」機能を使ってメッセージを消してくることがあるため、やり取りが発生するたびにこまめに撮っておくのが理想です。
投資サイト・アプリの管理画面
あなたが自分の資産が増えていると信じて見ていた「偽の運用画面」は、詐欺の立証に不可欠です。
- 保存内容: 現在の残高、これまでの入金履歴、出金申請が「保留」や「拒否」になっている画面。
- URLの確認: サイトのURL(ドメイン)がはっきり映るようにスクショを撮ってください。
相手から送られてきた「公式文書」風の画像
「金融庁の許可証」「預託金受領証」「身分証明書」など、相手が信用させるために送ってきた画像は、後の解析で「偽造」を証明するための重要な手がかりになります。
【金銭の流れ】お金の行方を特定する送金・決済の証拠

お金を取り戻すためには「どこに、いくら、どうやって払ったか」を正確に証明する必要があります。
銀行振込の場合:振込明細書・受領書
ATMで発行された紙の明細や、ネットバンキングの「振込完了画面」を用意してください。
- 最重要情報: 振込先の「銀行名・支店名・口座番号・名義人」。
- 名義人の確認: 相手の会社名ではなく、見知らぬ個人名義や別会社の名義である場合、それは「飛ばし口座」である有力な証拠になります。
クレジットカード・電子マネー決済の場合:利用明細
クレジットカードの利用履歴や、コンビニで電子マネーを購入した際のレシートを確保してください。
- 決済代行会社の特定: 明細に記載されている「決済先名」から、弁護士は裏側にいる決済代行会社を特定し、チャージバック交渉を行います。
仮想通貨(暗号資産)送金の場合:トランザクションID
仮想通貨の場合、もっとも重要なのは「トランザクションID(TXID)」または「送金先アドレス」です。
- 保存内容: 自分のウォレットや取引所から、犯人のアドレスへ送金した際の履歴画面。
- ハッシュ値: 英数字の長い文字列(ハッシュ値)をコピーしてメモ帳などに保存しておくと、弁護士がブロックチェーン解析を行う際にスムーズです。
【周辺情報】犯人の正体に迫る付随的証拠

一見、関係なさそうに見える情報が解決の決定打になることがあります。
紹介者・広告の出稿元
「SNSの広告から入った」「マッチングアプリで紹介された」場合、その広告のスクリーンショットや紹介者のプロフィール情報も保管してください。組織的な詐欺の場合、紹介者のアカウントから芋づる式に本丸を特定できることがあります。
電話番号・メールアドレス・住所
もし相手と電話をしたことがあるなら、着信履歴のスクリーンショット。メールであればヘッダー情報(送信元サーバーがわかる情報)を含めて保存します。
【証拠の整理術】弁護士が「使いやすい」まとめ方

証拠はただ集めるだけでなく、時系列で整理されていると弁護士の調査費用を抑え、着手までの時間を短縮できます。
- 時系列順に並べる: 「○月○日に出会い、○月○日に最初の10万円を振り込んだ」といった簡単な年表を作ってください。
- フォルダ分け: 「LINEスクショ」「振込明細」「サイト画面」のように項目別に分けて保存します。
- 加工しない: スクリーンショットは、トリミング(切り抜き)せず、画面全体が映る状態で保存してください。加工されていると証拠能力が疑われる場合があります。
もし証拠を消されてしまったら?

「相手にLINEをブロックされて履歴が見られない」「サイトが閉鎖されてアクセスできない」という場合でも、諦めないでください。
弁護士は、専門的な技術を用いて以下のルートから情報をサルベージ(救出)できる可能性があります。
- スマホの解析: 端末に残っているキャッシュデータからの復元。
- サーバー・ログの追跡: 通信記録からのアクセス先特定。
- 銀行・カード会社への開示請求: あなたの手元に明細がなくても、法的な権限で金融機関から履歴を取り寄せます。
ただし、これらには時間がかかります。「証拠がないから相談できない」と思い込まず、まずは「今、手元にあるもの」だけで相談に行くことが最善の策です。
まとめ:あなたの証拠が犯人への鉄槌になる

投資詐欺の解決は、情報のパズルを完成させる作業に似ています。あなたが集める一つひとつのスクリーンショットや明細書が、パズルのピースとなり、最終的に犯人を追い詰める巨大な壁となります。
「こんな小さな情報は関係ないだろう」と自己判断で捨ててしまうのが、最ももったいないことです。どんな些細なことでも構いません。まずは可能な限りすべてのデータを保護し、その武器を携えて専門の法律事務所を訪ねてください。
あなたの手元にあるその証拠は、失った資産を取り戻すための唯一の鍵です。

