投資詐欺の被害に気づき、震える手で通帳やスマホを持ち、警察署の門を叩く。そこで数時間の事情聴取の末に告げられる「これは民事不介入なので、警察ではこれ以上対応できません」という言葉。
全財産を失ったかもしれないという極限状態の被害者にとって、この言葉は絶望以外の何物でもありません。「国家権力である警察が動かないなら、もう手立てはない」と、多くの方がここで自責の念に駆られ、回収を諦めてしまいます。
しかし、冷静になってください。「警察が動けない理由」は、あくまで警察という組織の職務権限に起因するものであり、あなたの被害が救済不能であることを意味するものではありません。
投資詐欺被害の回復において、警察の「刑事捜査」と弁護士の「民事回収」は、全く異なる法律・理論に基づいて動く別個のプロセスです。本記事では、法的な観点から「なぜ弁護士なら壁を突破できるのか」を徹底的に深掘りします。
警察を縛る「民事不介入」の正体と限界

なぜ、国民の安全を守るべき警察が、巨額の詐欺被害を前に「動けない」と言うのでしょうか。そこには法治国家としての厳格なルールが存在します。
「刑事罰」と「金銭返還」の明確な分離
警察の目的は、刑法に抵触した犯人を逮捕し、検察へ送り、刑罰を与えること(刑事責任の追及)です。一方で、奪われたお金を返させること(損害賠償)は民法に基づく「民事責任」の領域です。 日本の法体系では「私的自治の原則」があり、個人の金銭トラブルに国家権力が介入することは極めて慎重であるべきとされています。これが「民事不介入」の根本的な思想です。
詐欺罪立証における「欺罔(ぎもう)意図」の壁
警察が刑事事件として受理するためには、犯人が「最初から騙すつもりで、金銭を奪う目的があった」ことを客観的に立証しなければなりません。 犯人側が「運用はしていたが、相場の変動で損失が出ただけだ」「返す意思はあるが、今は金がないだけだ」と主張した場合、それは「契約不履行」という民事上の問題となり、警察は「詐欺罪」としての構成要件を満たさないと判断せざるを得ないのです。
リソースと優先順位の問題
残念ながら、警察の捜査リソースは有限です。組織化・国際化された投資詐欺は、一人の被害者の訴えだけで全容を解明することが難しく、捜査に着手しても「犯人の特定に至る可能性が低い」と判断されると、受理を回避(相談扱い)される傾向にあります。
弁護士が「民事」の土俵で発揮する圧倒的な機動力

警察が「100%の犯罪立証」をスタートラインとするのに対し、弁護士は「不法行為による損害が発生している事実」をスタートラインとして、即座に実力行使に移ることができます。
23条照会(弁護士照会制度)という公的権限
弁護士には、弁護士法第23条の2に基づき、官公庁や企業に対して情報開示を求める権限があります。
- 銀行への照会: 振込先口座の開設者情報の開示
- 通信会社への照会: 犯人が使用した電話番号やIPアドレスの登録者特定
- 決済代行会社への照会: クレジットカード決済の裏側にある加盟店情報の特定 これらは警察の捜査令状を待たずとも、弁護士が独自の判断で迅速に実行できる強力な調査手段です。
「証拠の優越」で勝負する民事訴訟
刑事事件では「疑わしきは被告人の利益に」という原則があり、100%に近い立証が必要です。しかし、民事では「どちらの主張がより確からしいか(証拠の優越)」で判断されます。 明らかに不自然な勧誘、実体のない運用報告、個人口座への入金指定。これらを積み上げることで、弁護士は相手の「不法行為」を認めさせ、資産を差し押さえる法的根拠を構築します。
弁護士が振るう「返金のための3つの法的スキーム」

具体的に、弁護士がどのような手順で「民事不介入」の壁を突き崩し、現金を確保するのかを解説します。
振り込め詐欺救済法による口座凍結
犯人が使用した銀行口座を特定し、銀行に対して「犯罪利用口座」としての疑いを指摘し、即座に支払停止(凍結)を要請します。
- メリット: 犯人が資金を引き出す前にロックをかけることが可能。
- 法的根拠: 警察の介入を待たずとも、弁護士が「被害の蓋然性」を説明することで銀行は応じることがあります。口座に残高があれば、その金額を被害者で按分して回収する道が開けます。
決済代行会社への「不当利得返還請求」
クレジットカードや電子マネーで決済してしまった場合、犯人本人ではなく、決済を中継した「決済代行会社(アクワイアラ)」を相手取ります。 代行会社には「適切な加盟店審査を行う義務」があり、詐欺業者に決済システムを提供していたことへの責任を追及します。これは日本国内の正規の企業を相手にするため、海外の詐欺師を追うよりもはるかに回収の確実性が高い手法です。
仮差押え(民事保全手続)
裁判所を通じて、相手の財産(預貯金や不動産、あるいは中継口座の債権)を一時的に凍結する手続きです。 「訴訟で勝っても、その時にお金がなければ意味がない」という事態を防ぐため、弁護士は受任直後にこの保全手続きを検討します。警察には「個人の財産をあらかじめ凍結しておく」という発想はありません。これは弁護士独自の「回収戦略」です。
なぜ警察より弁護士の方が返金に近いのか

警察と弁護士の最大の違いは、相手(詐欺師)との交渉余地にあります。
- 警察: 相手を捕まえるのが仕事。捕まれば犯人は刑務所に行きますが、あなたへの返金義務を果たすインセンティブは警察の介入によって生まれるわけではありません。
- 弁護士: 「返金すれば告訴を取り下げる」「返金すれば民事上の責任を免除する」といった示談交渉が可能です。詐欺師にとって、身元が割れ、口座が凍結され、刑事告訴の危機にさらされた時、唯一の逃げ道は「返金に応じること」になります。
つまり、弁護士は法律という武器を背景に、犯人に対して「お金を返した方が得だ」と思わせる状況を作り出すプロなのです。
まとめ:法的手続きに絶望という文字はない

警察で言われた「民事不介入」という言葉は、決して「お手上げ」という意味ではありません。それは単に、「ここからは弁護士という専門家が、民事法を武器に戦う領域ですよ」というバトンタッチの合図に過ぎません。
投資詐欺被害は、時間が経過するほど「口座の解約」「資金の洗浄(ミキシング)」「組織の解散」によって回収の難易度が指数関数的に上がります。警察の対応に時間を奪われ、自責の念で立ち止まっている間にも、あなたのお金は遠ざかっています。
警察に断られたという事実は、むしろ民事的な解決ルートに専念すべきという明確な指針です。今すぐ、投資詐欺に特化した弁護士の知恵を借りてください。法律は、自ら動く者を救うために存在しています。

